前のページ   次のページ

4.2 太陽風によるヴァン アレン帯の形成と地球の気象の巡回

  [ヴァン アレン帯の形成]
 地球が自転しているので、内部の荷電粒子も運動しています。運動している荷電粒子が並走すると磁気的結合があるので、磁気的結合の連鎖により磁気圏が地球から遠方の領域まで広がることができます。 その磁気圏と太陽風の荷電粒子が磁気的な相互作用します。
   図10 に示すようにヴァン アレン放射線帯は、高度10,000〜20,000kmの外帯と高度2,000〜5,000kmの内帯があります。6,000 km から 13,000 km の間に荷電粒子のないスロット領域があります。 太陽風の主成分である水素イオン(H+)は数百km/secの速度を持っています。その太陽風の水素イオンの運動と地球を周回する正の荷電粒子との磁気的結合により正イオンが増加して電子密度が低下により、更に正電荷の増加を生じます。こうしてヴァンアレン帯の内帯を形成します。ヴァンアレン帯の外帯は電子が主体であり、高エネルギー電子(MeV級)が含まれています。外帯と内帯の間の中間領域では磁力線に取り込まれた電子と正のイオンが反対方向に運動するので、再結合によって荷電粒子の存在しないスロット領域が形成されます。
 ,
         
            図10 ヴァン アレン帯の構造。

[太陽風による地球の天気は西から東に循環する]
o  地球には電子密度が濃い電離層があって、電波を反射します。太陽風のH+は電波を反射しませんが、大気中に侵入して上空の分子と電離衝突するので、衝突電離で放出された電子により電離層を形成します。夜間に電子が発生されずにイオンと再結合して電離層の密度が低下します。
 水素原子の密度は上空90 km付近でピークとなり、上空25 km付近にはオゾンの密度がピークになる層があります。地上まで太陽風のH+が到達することは巨大な磁気嵐が襲う場合を除いて殆どありません。 しかし、太陽風のH+が大気の分子や原子と衝突する際に持っていた運動量を大気に与えます。 その結果、超高層の地球大気の気流を駆動することをS. Karasawaが指摘しました。
 地球の自転に伴い大気も移動しており、その速度は赤道付近ではジェット旅客機程度はあります。そこで、地球の側面をかすめて通過する太陽風は東側では加速し、西側では減速するので、地球の気象を反時計方向に回します。 地球の昼半球の赤道付近を直撃する太陽風は太陽の自転による回転性分を持っているので時計回転方向に貿易風を駆動します。 図11に示すように地球を周回する偏西風と貿易風は地球の自転と太陽風のH+によって駆動されています。

       
       図11 太陽風と地球の自転による地球の気象の巡回

目次                     -4.2-